02Specialist Talk

NAOKI IKEDA × JUN KURIHARA

Photograph_ XXXXX
Text_ ADO

Stylist
Naoki Ikeda

JOURNAL STANDARD Director
Jun Kurihara

流行の作り手が語る
2016年AWのトレンド。

2016年秋冬のスタイリングを担当したスタイリスト池田尚輝氏、
そしてシーズンのベクトルを決めるディレクター栗原潤。
サイクルの早いファッショントレンドの中にそれぞれの表現で身を置く2人が語るあれこれ。

text by ADO

進化する「ミクスチャー」の概念。

池田
全体のトレンドもそうですし、今回スタイリングをしながらも思ったんですが、「ミクスチャー」の概念がますます発展してきてますよね。’ 90年代の中に’70sがあったり、今度は’70sに’40年代や’30年代が入っているような。たとえば〈J.Wアンダーソン〉のコレクションは19世紀や’ 20年代からテイストを引っ張ってきてさらに’ 90年代の要素を組み合わせてる。テクノロジーにまみれた社会だからこその反動。そんな思惑が反映されているような気がしました。
栗原
そうですね。〈ジャーナル スタンダード〉の中でもわざと崩すような「バランスの悪いミックス感」のようなものを取り入れつつあります。ジャーナルスタンダードって、これまでちょっとオーセンティックだったり土臭いイメージがあった。そういうものを一回破って見ようと考えたのが今回なんです。これをきっかけにもっと変わっていけるかなと思っています。
池田
その感覚はブランドのセレクトにも反映されているんですか?
栗原
うちの場合サブブランドもあるんですよね。土臭い〈J. S. ホームステッド〉と、ちょっとクール目な〈ジャーナル スタンダード トライセクト〉、オーセンティックな〈ジャーナル スタンダード〉。これまでは各ブランドそれぞれを分けて考えていた部分があるんですけど、お客さん目線で考えてみたらそんなに意識しなくてもいいんじゃないかと。ブランドを超えて色んな合わせがあることが伝わればいいなと考えました。セレクトした若手のスケートブランドなども直球じゃないデザインになっていたりして、アイテムもテイストもルールを一度取っ払っている状態が面白いなと。
池田
〈ニューバランス〉×〈ダナー〉のレザースニーカーを見たときに、けっこうむずかしいアイテムに思ったんですけど、ゴールドっぽい色味のコーデュロイに黄色が入ってる〈アルペンチュール〉のアウターを合わせてみると渋カジというか’ 90年代に流行った匂いを感じて。当時こんな感じの人が実際にいたし、今こうして再現してみると新鮮ですよね。そういえば「デルカジ(モデルカジュアル)」というスタイルもありましたね。Gジャンにシャツを着てタイドアップして、コットンパンツを合わせる、渋カジのキレイ目版みたいな感じ。このカーキのコートを使ったスタイリングとかを見るとちょっと思い出します。あとは〈タイトブース〉の迷彩な感じとかも渋カジを彷彿とさせるような。
栗原
そうですね。
池田
このスタイリングを組み上げたあたりから、ジャーナル スタンダード的なミックス感覚の落としどころが見えてきたような気がしました。そうして〈オーガストフィフィティーン〉のジャケットをもう1度ながめてみると、ポケットのデザインがコーチジャケットみたいな角度で入る感じだったから、スポーティな方向にチューニングし直したりしましたね。

カルチャーを知り、カルチャーを
出さない崩し方。

栗原
池田さんが全バージョンのスタイリングを組み終わってから見させてもらったんですけど、あえてバラバラな色味を散りばめてもらったり、なんとも言葉にできないような合わせになっているのがすごくよかったです。
池田
たとえばイエローとブラウンとか、ブラウンとブラックとか懐かしい感じのするカラーリングって、いわゆる黒人が着たら一番似合う色味なんですよね。アフロな感じというか。そのあたりを意識してました。最近、カナダ出身のクレイトン・パターソンというアーティストが出した『Front Door BOOK』という写真集を買ったんですよ。1980年代からロウアーイーストサイドにある自宅前に集まってくる近所のグラフィティライター達を撮り続けた作品集なんですが、ここに出てくる人たちが着ているデニムの浅い色味とかカラーコントラストの付け方とかを研究して、もうちょっとスタイリングの手数を増やしていきたいなと思ってるところです。
栗原
すごい。この写真集を意識してやったの?
池田
これは今回のスタイリングを組み終わってから見つけました。
栗原
そういうことね(笑)。
池田
いや(笑)もともとイメージしてスタイリングしましたよ。これは自分のバリエーションを増やすためにね。
栗原
なるほどね。しっかりスタイリングにも同じ匂いがしてますよ。年代のカルチャーを知ってるけど知らないように見せるというか、押しつけになっていないような感じが今はいいのかなと思いますね。レイヤードとかも毎年出てくるキーワードだけど、時代的にはこれまでより個性が出しやすくなってるんじゃないかな。
池田
そうですね。自分で組み立てて表現できるのがレイヤードの面白さだと思うし。カスタムしていく感覚というかね。
栗原
一番簡単な方法としては丈感のバランスとかあえて変な色の組み合わせを考えると取り入れやすいかもですね。
池田
見えないところに気を抜かず、着心地に嘘をつかない感じでしょうかね。たとえばアウターに合う丈のカットソーを選んだり、フリースにはワッフル素材を持ってきたり、合わせる靴下の色にも気を抜かなければチラっと見えた時に全体がいい具合にまとまっているとかね。

ファッションの面白さが戻ってきた。

池田
最近面白いと思うブランドってありますか?
栗原
〈EVISEN〉とか〈TIGHTBOOTH PRODUCTION〉みたいな若いブランドですね。EVISENが東京のスケートアパレル、TIHGTBOOTH PRODUCTIONは大阪の映像チームから派生したアパレルです。自分たちでカルチャーをつくろうみたいなノリを彼らからすごく感じますね。言葉は極端ですが、いわゆるぽっと出のアメリカのブランドとかに比べるとすごく共感できる部分が多い。このブランドは来年盛り上がるだろうなと思います。あとは客観的に見てこれまでは〈ジャーナル スタンダード〉がセレクトしなさそうだったブランドたちを、ジャーナル スタンダードとして真面目に着よう、みたいな姿勢を打ち出せるのが面白いなと。
池田
なるほど!
栗原
このブランドたちがなかったら全体のトーンに凹凸を出すのがむずかしかったと思いますね。よくあるアウトドアブランド持ってきちゃうと、なんだか変わり映えしないというか、目が流れていっちゃうというか。
池田
確かにね。なんだか近頃、洋服が面白いですよ。
栗原
そうですね。一時期より面白くなってきましたよね。
池田
ファッションが雑貨の方にベクトルが向いていた時期は洋服への関心がみんな薄れてきていた感じでしたけど、今また楽しさが戻ってきた感じ。
栗原
面白い要素が周りを見渡すといろいろある状況だから、僕らセレクトショップも無理やり別注をつくって云々ではなく、あらゆる要素をしっかり選んでトータルで提案していきたいですね。

Profile_

スタイリスト
池田尚樹

いけだ・なおき/1977年長野県生まれ。スタイリスト坂井達志氏に師事し2000年独立。メンズファッション誌を中心に活動後、2005年にNYへ移住。2006年の帰国後はジャンルやスタイルにとらわれることなく雑誌を始め広告、TVなど幅広いフィールドで活躍中。

JOURNAL STANDARD ディレクター
栗原 潤

くりはら・じゅん/ブランド初期から〈ジャーナル スタンダード〉に携わり、長年バイヤーとして活躍。2016年よりディレクターに就任。その先見の目は社内でも随一を誇り、さまざまなブランドを紹介してきた。現在もバイヤーとして国内外のブランドを探求している。

ABOUT JSJ

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JSJ(=JOURNAL STANDARD JOURNAL)はジャーナルスタンダードが2016年秋冬に発行するタブロイドです。店頭とWEBで毎月1回配布いたします。

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